メカノクロスの有機合成
About Mechano Chemistry
有機合成化学は、過去100年以上に渡って、
医薬品や高機能化学材料を作り出してきた重要なテクノロジーですが、
石油由来の有機溶媒を大量に必要とする欠点がありました。
私達が注目するボールミルなどの攪拌装置を用いるメカノケミカル有機合成では、
従来の溶液系反応に比べて、反応における有機溶媒の量を大幅に削減できる上、
反応の高速化、操作の簡素化とコストダウンが可能になります。
また、これまで活用できなかった、不溶性化合物を反応に利用できるなど、
メカノケミカル有機合成は、有機化学の新しい世界を開く革新的な技術です。
メカノケミカル有機合成で
得られるメリット
- 有機溶媒の⼤幅な削減(CO2削減)
- 設備の⼩型化(省スペース化)
- 反応時間の⼤幅な短縮
- ⼈件費なども含めたコストダウン
- 従来法では出来ない難溶性物質の官能基化が可能
- バルク⾦属を効率的に活性化
- ポリマー修飾や分解が可能
- 不活性ガスを必要としないシンプルな反応操作
メカノケミカルでできること
Mechano Chemistry
01
メカノケミカル有機合成とは?
ボールミルなどの攪拌装置を用いて、有機合成反応を実施する新しい技術です。この技術を使うことにより、有機合成で扱いにくい溶解性の悪い化合物(未利用材料)を反応させることができるなど、有機合成を大幅に進化させるポテンシャルを持っています。
02
メカノケミカル有機合成による環境対応
CO₂発生の原因となる有機溶媒が極限まで減らせることから、環境にやさしいサステナブルな有機合成が可能になります。実際に、様々な反応において、有機溶媒の使用量を従来の約15分の1以下に削減できます 。
03
メカノケミカル有機合成による反応高速化
無溶媒または高濃度で有機合成が可能になることにより、一般的な合成反応よりも格段に反応時間が短縮できます。例えば、従来24時間必要であったSuzuki-Miyauraクロスカップリング反応が5分で進行します(従来法の約300分の1)。
実績、論文、受賞歴
Achievements and Awards
Representative Director / President & Chief Executive Officer
齋藤 CEO
- 2023年度北洋銀行スタートアップ研究開発基金獲得
- 2024 公益財団法人 三菱UFJ技術育成財団研究開発助成金採択
Director / Member of the Board & Technical Advisor
伊藤教授
- 2022 HSFC(エイチフォース)DemoDay 最優秀賞・北海道知事賞
- 2023 HSFC(エイチフォース)DemoDay 最優秀賞・北海道知事賞
Director / Member of the Board & Technical Advisor
久保田准教授
- MechSustInd International Award (メカノケミストリー分野の国際新人賞)
- 第72回 日本化学会進歩賞(固相メカノ有機合成化学の開拓と展開)
- Chemist Award BCA 2024(メカノケミカル法を活用した固体有機合成科学の開拓と展開)
技術紹介
メカノクロス社は、独自の特許技術を応用し、企業様と相談の上でご提案頂いた合成反応のメカノケミカル化を検討いたします。具体的には、反応の実現可能性から反応条件の最適化まで、お客様の特定のニーズに対して望ましい転化率、収率、選択性を目指します。新規メカノケミカル有機合成反応に関しては、共同研究先の北海道大学有機元素化学研究室と密に連携して迅速な開発を行います。実施するメカノケミカル有機合成は、様々なスケールで実施可能な体制を整えており、企業様からの多様なニーズに可能な限りお応えしたいと考えています。
メカノケミカル有機合成とは
従来の有機合成法は、標的反応を効率的に進行させる目的で、大量の有機溶媒を使用して撹拌する溶液法での合成が一般的です。
対して、ボールミルなどの攪拌装置を用いるメカノケミカル有機合成は、高効率な撹拌を活かした有機溶媒をほとんど使用しない新しい技術です。
MM400ボールミル
一般的なミキサーミル装置で、高い粉砕力を持ちます。反応容器(ジャーと呼ぶ)は1.5~50 mLの大きさで、ラボスケールでの検討に使用します。ジャーの材質も硬化鋼、ステンレス、タングステンカーバイド、メノウ、酸化ジルコニウム、PTFE、PMMAがあり、反応条件に合わせて調整可能です。
PM100 遊星ボールミル
高速回転での遠心力を利用したミル装置で、こちらも高い粉砕力を持ちます。反応容器(ジャーと呼ぶ)は12~500 mLの大きさで、ミキサー型よりもより大きなスケールの反応に利用します。ジャーの材質は硬化鋼, ステンレス, タングステンカーバイド, メノウ, 焼結酸化アルミニウム, 窒化ケイ素, 酸化ジルコニウムがあります。
TM300ドラムミル
ボールミルやロッドミルが可能な大型のミル装置です。ミキサーミルなどの粉砕力を備えつつ、ジャーサイズが5~43.4 Lであり、より大スケールでも反応が可能です。ジャーはステンレスのものが一般的です。
ポテンシャル
不溶性物質から新材料開発を
メカノケミカル有機合成では、化合物が完全に溶解させる必要がないため、少量の有機溶媒で反応が進行いたします。これは、今まで避けられてきた溶解性の悪い化合物が、メカノケミカル有機合成では利用できることを意味しています。実際に北海道大学の伊藤先生・久保田先生らは、不溶性物質の代表ともいえる顔料を基質としたクロスカップリング反応の開発に成功されました。これは、メカノケミカル有機合成が100年以上続く有機合成の世界を一変して進化させるポテンシャルを持っていることを意味しています。
バルク金属のポテンシャルを最大限に引き出す技術
バルク金属を用いる有機合成において、金属表面の活性化や反応溶媒の含水率が再現性を大きく低下させる原因となります。そのため、既存の方法は金属表面を活性する添加剤の使用や脱水処理後の反応溶媒を使用することが「必須」とされてきました。しかし、このメカノケミカル有機合成反応においては、強い撹拌力で金属表面を活性化するにより、添加剤なしで高効率に反応が進行します。また、反応溶媒は極少量しか加えないため、溶媒の脱水操作なし、空気中で再現性良く目的の化合物が得られます。この特性を活用した空気中で操作可能なペースト状Grignard試薬やアンモニア不要の超高速Birch還元が可能になりました。
可能反応まとめ
私達が注目するメカノケミカル有機合成では、通常の溶液条件では24時間で60%の進行に対し、新手法では5分でほぼ100%を実現しました。反応における1回当たりの廃棄物量は既存方の約15分の1、CO2排出量は約25分の1と大幅なコストダウンが可能になります。(Suzuki-Miyaura クロスカップリングで比較)
メカノケミカル化に成功した反応例
- Suzuki‒Miyaura coupling (Chem. Sci. 2019, 10, 8202.)
- Buchwald‒Hartwig coupling (Nature Commun. 2019, 10, 111.)
- Sonogashira coupling (Chem. Sci. 2022, 13, 430.)
- Grignard反応 (Nature Commun. 2021, 12, 6691.)
- Birch還元 (Angew. Chem. int. Ed. 2023, 62, e202217723.)
- メカノレドックス反応 (Science. 2019, 366, 1500.)
- 不溶性有機化合物の反応 (J. Am. Chem. Soc, 2021, 143, 6165.)
- ポリマー改質・機能化 (Angew. Chem. int. Ed. 2021, 60, 16003.)
安価な試薬かつ無溶媒で進⾏する芳⾹族求的核フッ素化反応(特許申請中) 上記以外の反応も対応可能ですので、ご相談ください。